年末調整の変更点は?令和8年分、基礎控除など4つの改正

税制優遇・制度

勤務先から「保険料控除申告書」や「扶養控除等申告書」の束が配られるのは、だいたい10月末から11月。毎年の恒例行事ですが、令和8年分は例年と少し違います。基礎控除や給与所得控除など、年末調整のベースになる制度が4つ変わるからです。

難しい制度改正の話に見えますが、結論はシンプルです。多くの人にとって「控除が増える=課税される所得が減る=12月の年末調整で戻ってくるお金が増える」方向の改正です。この記事では、何が変わるのかを整理し、どのくらい変わるのかをやさしい例で見ていきます。

基礎控除と給与所得控除、2つが同時に上がる

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イメージ(AI生成)

令和8年分でまず押さえたいのは、所得税を計算するときの「基礎控除」と「給与所得控除」が両方引き上げられることです。

基礎控除は、所得の多い少ないにかかわらず誰でも差し引ける控除です。これまでの58万円から、本則で62万円になります。さらに、合計所得金額が489万円以下の人は、令和8年分・9年分に限り42万円の上乗せがあり、基礎控除は最大104万円になります(489万円超655万円以下の人は5万円の上乗せで67万円。令和7年分にも同じしくみの上乗せがあり、最大は95万円でした)。

給与所得控除は、会社員やパート従業員の「仕事にかかる費用」とみなして給与収入から差し引く控除です。最低保障額がこれまでの65万円から、本則69万円、さらに令和8年分・9年分の特例で74万円まで上がります。パートやアルバイトで収入が少なめの人ほど、この最低保障額の引き上げの影響を受けやすくなります。

ここだけ押さえておけば大丈夫です。「2つの控除がどちらも増えた」とだけ覚えておけば、年末調整の書類を見たときに「何が変わったんだろう」と迷わずに済みます。

扶養の範囲も広がる。特定親族特別控除という新しい制度も

基礎控除の引き上げとセットで、家族を扶養に入れられるかどうかの所得の基準も変わります。扶養親族や配偶者として認められるための所得要件が、これまでの58万円以下から62万円以下に広がりました。給与収入だけで働いている人なら、目安は123万円以下から136万円以下に上がったイメージです。

あわせて、19歳以上23歳未満の子どもなど「特定親族」については、所得が62万円を超えても123万円以下(給与収入のみなら197万円以下)であれば、特定親族特別控除が段階的に受けられます。所得62万円超85万円以下なら満額の63万円で、そこから所得が増えるほど控除額は小さくなります。この控除自体は令和7年分に創設されたもので、令和8年分では基礎控除の引き上げに合わせて対象の所得の範囲が見直されました。大学生の子どもがアルバイトを増やしても、以前ほどシビアに「扶養を外れる・外れない」で悩まなくて済む人が増える制度といえます。

この控除を受けるための書類も新しくなり、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」という欄が、基礎控除申告書などとまとめて1枚になった様式に追加されています。会社から配られた書類に見慣れない欄があっても、慌てなくて大丈夫です。

定額減税はもう関係ない。生命保険料控除は別枠で拡充

令和6年に話題になった「定額減税」(1人あたり所得税3万円)は、令和6年分だけの特例です。令和8年分の年末調整には、定額減税の計算は出てきません。「あの減税、今年も効くんだっけ?」と混乱する方もいると思いますが、今回はもう関係がないと考えて大丈夫です。

一方で、生命保険料控除については令和8年分・9年分に限った別の拡充があります。23歳未満の扶養親族がいる世帯は、新制度の一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に広がります。子育て中で生命保険に入っている方は、保険料控除申告書を書くときに忘れずに確認したいポイントです。この控除の具体的な書き方や上限額の全体像は、別の記事であらためて詳しく整理する予定です。

たとえば年収500万円くらいの会社員なら、基礎控除の本則が58万円から62万円に増えるぶんだけでも、課税される所得が4万円減ります。所得税率が10%の人で、単純計算すると4万円×10%=4,000円。ここに特例の上乗せ分も加わるので、実際に戻ってくる額はもう少し大きくなる見込みです。

控除・制度 令和7年分まで 令和8年分から
基礎控除(本則) 58万円 62万円
基礎控除の特例上乗せ +37万円(最大95万円) +42万円(最大104万円・合計所得489万円以下)
給与所得控除の最低保障 65万円 69万円(令和8・9年分の特例で74万円)
扶養親族等の所得要件 58万円以下(給与123万円以下) 62万円以下(給与136万円以下)
特定親族特別控除 所得58万円超123万円以下で最大63万円(令和7年分に創設) 所得62万円超123万円以下で最大63万円(給与136万円超197万円以下)

※令和8年度税制改正の内容をもとに作成。金額は2026年10月時点で公表されている制度に基づく。

ケース 変わる控除 増える控除額 税率の目安 単純計算の負担減
年収500万円の会社員(本則部分だけで計算) 基礎控除 +4万円 10% 約4,000円
年収150万円のパート従業員 課税最低限が178万円へ ― ― 所得税は0円のまま

※税率は所得税の目安(復興特別所得税・住民税は含まない簡易な試算)。基礎控除の特例上乗せは含めていないため、実際の負担減はこれより大きくなることがある。金額は各自の所得全体で変わるため、単純計算の目安として示している。

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よくある質問

Q. 年末調整の書類を書くとき、具体的に何が変わりますか?
A. 基礎控除申告書や配偶者控除等申告書、特定親族特別控除申告書がまとめて1枚になった様式が配られます。基礎控除の金額や扶養の所得要件の数字が新しくなっているので、会社から配られる最新の様式を使うことが大切です。

Q. 令和7年分までの年末調整と比べて、必ず税金が戻ってきますか?
A. 控除が増える方向の改正なので、課税される所得が減る人が多くなります。ただし収入や家族構成によって影響は人それぞれなので、必ず戻ってくると言い切ることはできません。年末調整の結果は、勤務先から渡される源泉徴収票で確認できます。

Q. 定額減税は令和8年分でも申告が必要ですか?
A. 不要です。定額減税は令和6年分の所得税に限った特例措置で、令和8年分の年末調整には関係ありません。

参考:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」、国税庁「No.1177 特定親族特別控除」、国税庁「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)」、マネーフォワード クラウド給与「年末調整2026年(令和8年)の変更点をわかりやすく解説」(いずれも2026年10月に確認)

今日のまとめ

  • 令和8年分は基礎控除・給与所得控除がともに引き上げられ、扶養の所得要件も広がった
  • 19〜22歳の子どもがいる世帯の「特定親族特別控除」は、対象になる所得の範囲が62万円超123万円以下に広がった
  • 定額減税は令和6年分限りで令和8年分には関係しない。生命保険料控除は別枠で拡充されている

勤務先から書類が配られたら、新しい基礎控除や扶養の数字を頭の片隅に置いて書いてみてください。今日の授業はここまで!次回もお楽しみに。