レモネードを1杯150円で売るとして、何杯売れば赤字を抜け出せるでしょうか。材料費だけでなく、屋台を借りるお金もかかります。「何杯売れば、まず赤字じゃなくなるのか」——この境目を表す数字が、損益分岐点(そんえきぶんきてん)です。お店を開く人はもちろん、フリーランスや個人事業主、家計をやりくりする人にとっても、この考え方を知っておくと数字に強くなります。
損益分岐点ってなに?

損益分岐点とは、売上高と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになる売上の大きさのことです。売上がこのラインを超えれば黒字、下回れば赤字になります。
費用は大きく2つに分かれます。売れても売れなくてもかかる「固定費」と、売れた分だけ増える「変動費」です。
- 固定費の例:家賃、人件費の基本給、屋台やお店のレンタル代、通信費の基本料金
- 変動費の例:材料費、仕入れ値、商品を送る送料、決済手数料
損益分岐点を知るには、まずこの2つを分けて考える必要があります。ここで迷う人が多いところですが、あわてなくて大丈夫です。次の例で一緒に見ていきましょう。
レモネード屋台で損益分岐点を計算してみよう
たとえば、公園でレモネード屋台を開くとします(以下はすべて架空の数字による試算です)。
- レモネード1杯の販売価格:150円
- 1杯あたりの材料費(レモン・砂糖・カップ):30円 → これが変動費
- 屋台のレンタル代:1日3,000円 → これが固定費
1杯売れるごとに、150円から材料費30円を引いた120円が手元に残ります。この120円のことを「限界利益」と呼びます。限界利益の合計が固定費の3,000円と同じ金額になったところが、損益分岐点です。
計算式はシンプルです。
損益分岐点の販売数 = 固定費 ÷ 1個あたりの限界利益
このケースでは、3,000円 ÷ 120円 = 25杯。25杯売れば固定費をちょうど回収でき、26杯目からが利益になります。売上高で表すと、150円 × 25杯 = 3,750円です。
| 項目 | 金額・数量 |
|---|---|
| 販売価格(1杯) | 150円 |
| 変動費(1杯あたりの材料費) | 30円 |
| 限界利益(1杯あたり) | 120円 |
| 固定費(屋台レンタル代・1日) | 3,000円 |
| 損益分岐点の販売数 | 25杯 |
| 損益分岐点の売上高 | 3,750円 |
※架空の数字による試算例です。
この関係をグラフにすると、売上高の線と総費用の線が25杯のところで交わり、そこから右側だけが黒字(利益が出る範囲)になります。数字だけで見るより、線がどこで交わるかを目で見たほうがイメージしやすいはずです。

損益分岐点を下げる3つの方法
損益分岐点は低いほど、少ない売上で黒字に届きます。同じレモネード屋台の例で、損益分岐点を下げる方法を3つ見てみましょう。
1つ目は、販売価格を上げることです。150円を170円にすれば、1杯あたりの限界利益は140円に増え、損益分岐点は3,000円 ÷ 140円 = 約21.4杯まで下がります。
2つ目は、変動費を減らすことです。材料の仕入れ先を見直して材料費を30円から20円に抑えられれば、限界利益は130円に増え、損益分岐点は約23.1杯まで下がります。
3つ目は、固定費を減らすことです。屋台のレンタル代を3,000円から2,400円に交渉できれば、損益分岐点は2,400円 ÷ 120円 = 20杯まで下がります。
どれも「売る数を増やす」のとは違う方向のアプローチです。売上を伸ばすのが難しい時期でも、費用の見直しだけで黒字ラインに近づけることがあります。なかでも固定費の削減は、売上が変わらなくても損益分岐点をそのまま押し下げます。家賃の見直しや、使っていない固定契約の解約が効くのはこのためです。
もう少し踏み込むと、「実際の売上が損益分岐点をどれだけ上回っているか」を示す安全余裕率という指標もあります。この屋台が1日5,000円を売り上げたとすると、安全余裕率は(5,000円-3,750円)÷5,000円×100 = 25%です。数字が高いほど、売上が落ち込んでも赤字になりにくいということになります。ここは覚えなくても大丈夫、こういう考え方もあると知っておくだけで十分です。
損益分岐点を知っておくメリットは、計算そのものよりも使い道にあります。新しい商品を出すときに「何個売れれば元が取れるか」を先に見積もれますし、値上げを考えるときも「価格を10円上げたら損益分岐点がどう動くか」を数字で確認してから判断できます。感覚だけで決めるより、後から振り返りやすくなります。
よくある質問
Q. 損益分岐点はどうやって計算しますか?
固定費を「1個あたりの限界利益(販売価格-変動費)」で割ると、損益分岐点の販売数がわかります。それに販売価格をかければ、損益分岐点の売上高になります。
Q. 固定費と変動費はどう見分けますか?
売れても売れなくても発生する費用が固定費、売れた分だけ増える費用が変動費です。家賃や人件費の基本給は固定費、材料費や仕入れ値は変動費にあたることが多いです。
Q. 損益分岐点は低いほうがいいですか?
一般的には低いほど、少ない売上で黒字になりやすく安全度が高いといえます。ただし業種や事業の段階によって目安は変わるので、数字そのものより下げる方法を知っておくことが大切です。
Q. 損益分岐点を知って何に使えますか?
新商品が何個売れれば採算が取れるかの見積もりや、値上げ・費用削減を検討するときの判断材料に使えます。感覚ではなく数字で経営判断をするための土台になります。
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参考:中小企業基盤整備機構 J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法を教えてください。」
今日のまとめ
- 損益分岐点は、売上と費用が同じになり利益がゼロになるライン
- 固定費 ÷ 1個あたりの限界利益(販売価格-変動費)で計算できる
- 価格を上げる・変動費を減らす・固定費を減らす、の3方向で下げられる
家計にあてはめても、家賃や通信費のように毎月変わらない支出は固定費、食費のように使った分だけ増える支出は変動費と考えられます。お店の数字も家計の数字も、見方の骨組みは同じです。次回もお楽しみに。


